別に僕は何でもな医師。

中堅内科医の独り言、健康コンサルタント

透析患者さんの看取り

久しぶりの投稿になりました。

透析をされている方の看取りについて今回は書いていこうと思う。

 

 

 

透析をしていると寿命が短くなる?

透析を導入する際に、「透析を始めると長く生きられないんでしょ?」と聞かれることも多い。

透析患者さんの寿命は短いというのは残念ながら事実であるが、透析機器や新規治療薬の登場により年々改善してきているという側面もある。

 

透析患者さん全体で見たとき、5年生存率は50-60%前後となる。透析を開始して半数近くの方が5年後にはお亡くなりになっているという事実がある。

 

こういった情報のみが広がったことで、「透析=早死にする」「透析=悲劇」といったマイナスな印象を与えてしまうことも多いのではないだろうか。

 

実際のところ、生存率というのは統計学的にみられている事実ではある一方で、年齢や疾患により大きく変化するため、一個人にそのまま当てはめるのは間違いだ。

 

例えば、超高齢化社会となった現代では80代後半~90歳前半で透析を開始する人も少なくない。上記のデータにはそもそもの余命が短い方も含まれているということだ。

 

また、透析になってしまった原因疾患や個人の併存疾患によっても大きく変わってくる。

腎不全の原因が糖尿病である場合には、感染症や心血管リスクが高くなるため、生存率が他疾患と比べて低下しうるし、透析になった後もやはり管理が不十分であると心・脳血管疾患、感染症骨粗鬆症など、種々のリスクが上昇してしまう。

 

現在の年齢や原因疾患、既往歴などを照らし合わせた上で、どれぐらいの余命になるか、というのは推定はできるかもしれないが、かなり不確実だ。

「透析になったらあとどのぐらい生きられますか」とおっしゃる方もいるが、正確にはお答えできないし、逆に端的に答えてしまう医師がいるとするとそれは誤りだと思う。

 

「透析をしないと、あとどれぐらいしか生きられない」というのは比較的推測できることもある。

上にも書いたように原因疾患、既往歴、これまでの腎機能の低下速度などから、透析を開始したほうがよいタイミングとして大まかな目安はお伝えできる。

 

透析患者の死因

わが国の慢性透析療法の現況(2023年12月31日現在)によると、

感染症

心不全

③悪性腫瘍

④脳血管障害

心筋梗塞

となっている。

 

厚生労働省の出している人口動態統計での死因は、

①悪性新生物

②心疾患

③老衰

④脳血管疾患

⑤肺炎

となっており、差があることがわかる。

 

透析患者において感染症が上位にきうる理由はいくつかある。

・コロナの際にも重症化リスクに挙げられていたように、腎不全があることは免疫力低下をきたしてしまう。透析により血液を浄化することができるが、やはり健常の腎臓に比べると不十分でああり、尿毒素が貯留することで易感染性の状態になってしまう。

・透析を行うためにシャントという血管を穿刺しなければならない。シャントではなくカテーテル留置が必要な方もいるが、どちらも血管内に異物が入るという点で血流感染を生じうる。清潔操作を行っていてもやはり感染のリスクは常にある。

糖尿病を持っている方はそれだけでも感染症のリスクが上がるし、腎炎や自己免疫疾患を併発していてステロイドなどの免疫抑制剤は使用している方もいるので、それでも感染症リスクが上がる。

・透析では体にとって必要な蛋白なども除去されてしまう。また、週3回、1回4時間は同じ姿勢(多くは寝た状態)で過ごさなければならないため、高齢になるにつれて筋肉量の低下が懸念される。いわゆるフレイルやサルコペニアと呼ばれる状態になりやすく、易感染性につながる。

などなど...

 

こういった理由から感染症が第一位になると思われる。

 

第二位の心不全については、

・透析患者はリンやカルシウムのコントロールが不十分であると狭心症心筋梗塞といった虚血性心疾患のハイリスク (糖尿病が原疾患となるとやはり更なるリスクになりうる)

・大動脈弁狭窄症と呼ばれる弁膜症の進行速度が速い。

・尿が出ないことで体内の水分量の調整が透析に依存することになる。

・週3回で不十分な体液コントロールが続くことで心臓への慢性的な負担になる。

といった理由からであろう。

 

透析をしていることは不幸なのか?

「透析になったらもう終わりだ」とおっしゃる方もいる。

現在の血液透析は週3回、1回4時間を基本に行われている。送迎や待機時間も含めると半日以上潰れてしまう。透析後は血圧低下の影響から体調が悪くなるためずっと寝ているという人もいる。

これまでの日常から大幅に変わる生活スタイルから、ショックを受ける方も多く、透析開始時には受け入れ切れない方もいるだろう。

(そういった方にはまずは週1-2回から短時間の血液透析で開始してみるケースもあれば、腹膜透析をすすめることもある。)

 

しかし、透析室自体がある種のコミュニティとして機能していることも多い。

透析クール(月水金/火木土)や透析ベッドは患者さん毎に固定されることが通常であるため、毎回顔を合わす患者さん同士でのつながりができる。

また、透析室のスタッフとのコミュニケーションを楽しみに来院される方も多い。

実際の家族よりもお会いする頻度が多くなる患者さんもいるだろう。

(もちろん、人間関係なので合う合わないはあるけども...)

 

他者とのつながりが希薄であり孤独を感じている方は幸福度が低くなるといった研究もある。

これらを解消しうるという点で良い側面はあると思う。

 

透析しながら読書をしたり、映画をみたり。運動療法としてエアロバイクを漕いだり、寝たままできる筋トレに励んでいただくこともある。

 

もちろん、患者さんによっては血圧が不安定になってしまいそれどころじゃないという人もいるし、透析中にずっと眠ったままで昼夜逆転してしまいQOLが低下している方もいる。

 

だが、一概にみんながみんな不幸だと感じているということはない。

透析クリニックや病院によっては、患者会ができ、みんなでウォーキングやハイキングなどのイベントを企画しているところもある。

 

 

どのように最期を迎えるか

透析患者さんがお亡くなりになるケースで多いのは、上記で挙げたような感染症をきっかけに状態が悪化してしまう場合だ。

感染症そのものが重症化する場合もあれば、血圧変動の問題から「透析を継続できない」状態になってしまうこともある。

血液透析はやはり循環動態に大きく影響する治療であり、透析をすることで死期を早めることもあるため、そのような場合には透析を見合わせざるをえないと判断することもある。

原因が感染症のみならず、狭心症心筋梗塞などの虚血性心疾患や大動脈弁狭窄などの弁膜症が背景にある場合も同様である。

急性期には透析用のカテーテルを挿入し、24時間かけてゆっくりと透析を行う方法(CHD, CHDF)もあるが、それにも限界がある。

カテーテルを挿入することでの様々なリスクとも隣り合わせになる。

 

尿が全くでない透析患者さんの場合、透析を行わなければ体にカリウム、尿毒素、水分が貯留してくることで個人差はあるが数日から数週間の経過でお亡くなりになることが多い。

akizumiclinic.com

 

患者さんの中には長年の透析や心疾患などの背景から、慢性的に「透析困難症」で苦しむ方もいる。透析困難症では、透析により血圧が著しく低下していまい、昇圧剤を使用したり、透析をゆっくり長めに行ったり、場合によっては週4日に増やしたりして対応する。

 

以上のように様々な理由で透析を見合わせざるをえないケースがあるのだが、やめることで数日~数週間で亡くなってしまうという現実に直面する患者さんやご家族としては、心理的にはかなり苦しいだろう。

 

しかし、透析を見合わせるとなった場合も、心不全、腎不全のターミナルとして諸症状の緩和ケアにより穏やかに最期を迎えることも可能である。

 

やはりある程度の年齢になってくると、家族内で「どのように最期を迎えるか」という人生会議を行っておく必要がある。

医療者でなければ、最期の場をリアルに想像することは難しいかもしれないので、かかりつけの医師がいれば相談してみるのもいいだろう。

 

 

 

良質な睡眠のために重要なポイント5つ

外来で不眠を訴える方は多い。

日本人の平均睡眠時間は短く、「不眠大国」といわれることもある。

その経済損失は15~20兆円といった規模にも及ぶという。

 

いいお薬ありますか?という患者さんも多いが、まずは薬に頼らない方法を提案させていただく。

 

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ポイント① 起床時間を一定にする

床に就く時間を一定にしようと試みる方が多いが、大事なのは起床時間を統一するということ。

布団に入ったはいいものの、「全然眠れない!」という焦りから、逆に入眠が困難になってしまう。そうなるとベッド=眠れない場所、と潜在的に刷り込まれ、不眠が加速してしまう。

患者さんの中には、布団に入って2-3時間寝付けなくて困っている、という方もいる。

その場合は、体感でいいので15分ほど経っても眠れないと感じたら布団から出てしまおう。自然な眠気がきたタイミングで再度布団に入るのだ。

 

場合によっては、深夜遅くまで眠気が来ないために、睡眠時間が極めて短くなってしまうこともある。

その際、翌日の「昼間の眠気は夜に向けての貯金」と捉えるようにする。

 

 

ポイント②寝床は寝るだけの場所にする

上の話ともかぶってくるが、眠れないからといって一旦目をあけてスマホをいじってしまうケースだ。

スマホブルーライトが睡眠の質を下げるのは有名だが、youtubetiktokにある、いわゆるショート動画といわれるものには要注意。

次から次に刺激的なものが流れてくることで交感神経が活性化されてしまう。

スマホ依存」になっている現代人は非常に多いので何とかそこから抜け出して、良質な睡眠を手に入れよう。

 

スマホ心室とは別の部屋に置いてしまうのが手っ取り早い。枕元にスマホを置いておくと心理的に気になってしまうことで睡眠の質が下がると言われている。

アラーム機能をつけてある人は別室でアラームが聞こえる範囲に置いておく、あるいはアナログな目覚まし時計にする、といった方法もある。

 

眠れない日は布団から出て別の部屋で、ソファなどのリラックスできるスペースで紙媒体の本で読書をしたり、軽いストレッチをする。

 

読書の内容は熱中・興奮してしまうようなものは避ける。

つまらない、退屈だなぁという感覚があると眠たくなった経験がある人は多いのではないだろうか?

自分の興味のないものや、やや難しい内容のものを目にするのもいいかもしれない。

 

ポイント③カフェイン、アルコールは避ける

これも重要だが、夕方以降は覚醒作用のあるカフェインは避けるようにする。

職場で午後まで働いている人はコーヒーを飲む習慣があるかもしれないが、できれば16時頃からはカフェインの多い飲料は避けたほうがよいだろう。

 

コーヒー以外にも緑茶や紅茶も比較的カフェインは多く、ゼロカロリーのコーラやエナジードリンクにも多く含まれているため避けたほうがよい。

 

また、寝酒をする方も要注意である。

アルコールは確かに寝つきはよくなるのだが、睡眠全体としては質を下げてしまう。

カフェインもそうであるが、アルコールには利尿作用があり、夜間トイレに起きる回数も増えてしまう。

寝酒が習慣化してしまうと、極端な場合はアルコール依存症に繋がりうる。

 

ポイント④朝日を浴びる

朝に日光浴をすることは非常に大切である。

体内時計は少しずつずれていることが知られている。

朝日を浴びると、視神経を通して視交叉上核に届き、体内時計をリセットしてくれる。

 

また、朝日を浴びて14-16時間すると、脳の松果体とよばれる部位から眠気を促してくれるホルモン(メラトニン)が分泌されやすくなる

 

デスクワークが多くなり、日光を浴びる機会が少ない方は意識して朝日を浴びるようにしよう。

 

 

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ポイント⑤軽い運動を習慣にする

日中にできれば30分前後の有酸素運動を行う。筋トレなどの比較的激しい運動をする場合も午前中に行うことが望ましい。

 

Aerobic exercise improves self-reported sleep and quality of life in older adults with insomnia

こちらの論文(55歳以上が対象の研究だが)にも紹介されているが、週4回の有酸素運動を行うことで、

・寝つきが良くなる

・睡眠時間が長くなる

・睡眠満足度が上がる

と報告されている。

 

The effects of physical activity on sleep: a meta-analytic review

こちらのメタアナリシスでも、運動は睡眠に一貫してポジティブな影響を与えると報告されている。

 

仕事が終わって夕方以降に激しい運動をすると、交感神経が活発に働くことで入眠が難しくなる。私も時折経験するのだが...

筋トレは午前中に、有酸素運動をするとしても床に就く3時間前までには済ませておくほうがよい。

 

中等度の運動は睡眠薬(ゾルピデムなど)に比べると即効性には劣るものの、効果は同等とも言われている。

依存性もなく、その他身体疾患においても有益な運動は、「万能薬」とも言える。

運動にドはまりして、睡眠を妨害することのないように注意は必要だが。

 

人生の3分の1は睡眠であり、日中のパフォーマンスを作用する重要な要素である。

まずは薬に頼るのではなく、これらに取り組んでみるのはどうだろうか。

 

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年収1000万円の現実

 

年収1000万円の現実

よくyoutubeなどで年収1000万円、というのが高収入の一つの試金石としてあげられることが多い。

 

タワマンに住み、高級外車を乗り回し、休暇は海外旅行。

こんな暮らしをイメージされるかもしれない。

 

年収1000万だとすると、所得税、住民税、社会保険料などを引いた結果、手取りとしては700-800万程度だ。

 

首都圏だとファミリー向けの物件で家賃は20万を超えてくることも多々ある。

これだけでも年間200-300万円は失われるし、子どもが私学に通うとなると年間学費が150万円、さらに習い事にも費用がかかってくる...

 

将来のための保険、貯蓄、投資にもお金を回さなければならない。

これではとてもじゃないが高級外車は乗れないし、円安のご時世では気軽に物価の高い国には行けない。

 

医師の平均年収1400万円程度、手取りでいうと1000万円強。

 

我が家は首都圏在住、私学に通う子どもありで全然ゆとりはない。

できるだけ安いスーパーやドラッグストアで購入するし、外食は週に1回。それも優待券を利用していることも多い。昼は弁当を持参している。

洋服はブランド品は一切買わない。

先日お話したようにポイ活だって頑張っている。

 

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もちろん住む場所や進学先を選べば、年間の支出は抑えられるのだが、我が家の方針としてそこはなかなか変えがたい...

通学や習い事を考えると郊外には移れない。

 

現在は賃貸だが、今後マンションや戸建てを考えたときに1億前後は当たり前の世界...

しかも値上がりする一方。

 

独身で郊外住みであればもっと贅沢できただろうなぁ、独身時代にもっと貯蓄・資産運用しておけばなぁと思ってもしょうがない。

 

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医者のバイト

医者のバイトも今後は安くなってしまうのだろうか。

m3などのコミュニティでたまにみかけるのは、「以前は寝当直5-6万もらえていたのが、今は半額ほどになっている。」という発言。

確かに私が以前大学医局に属していた頃、療養型病院の寝当直は5万円ぐらいだった気がする。

ベースの給与は抑えて、「入院1件につき●●円」インセンティブをつけている病院も多い。

古くからの病院では、医師も高齢化が進んでおり、積極的に当直をするものが減っている現状もある。また、常勤医と非常勤医での当直代の格差が大きすぎるという問題もある。(常勤医は数千円なのに、非常勤医は数万円)

 

医療機関の廃業が過去最多を更新したという記事をみた。

こちらは帝国データバンクから引用。

医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]

 

廃業に至る理由は様々であるが、診療報酬は抑制される一方で、物価、人件費は高騰していることから、経営がうまく成り立たない医療機関も多い。

 

そういった背景から人件費を削減すべく、当直代もどんどん安くなってしまうのだろう...

医者の給与は高すぎる!と批判の的になることもあるが、それについてはこちらで私見を述べている。

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サステナブルな働き方

AIの発達が著しい現代において、今後「受診不要」の未来が起こりうるだろう。

現在のChat GPTなどのAIは医師国家試験も合格する実力があるし、画像検査の読影では一部で画像診断医よりもパフォーマンスを上げている。

 

Hey, Siri!といってなんでも教えてくれるように、スマホやHomePodに一声かければ、「あなたの疾患は●●の可能性があり、●●が第一選択薬です」みたいになるんじゃなかろうか。現在もそれに近いサービスがある。

 

デジタルデバイスで血圧・脈拍・SpO2測定をすることで、緊急性の判断もできるようになるだろう。

皮膚所見を写真にとって、病歴とともに提示することで皮膚科領域もカバーできる。

 

医者は淘汰されていく未来がみえるが、その中でサステナブルな働き方はなんだろう。

・手に職、ではないが、外科的な手技や超音波などの検査も自身でできるようにする。

・オンライン診療を積極的に利用する。

・専門性をアピールしていく。

・人柄も大事。コミュニケーションがうまくなければ診断精度のみではAIに負ける。

・医業以外に何か収益性のある事業を始める。

・稼げるうちにバイトしまくって、資産運用をフル回転。

 

何か他にいい案があればぜひ教えていただきたい...

 

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「ととのう」ことで心身ともに健康へ

こんにちは、Akizumiです。

 

 

久々にサウナに行った。

前日は当直。院内にシャワーはあるものの、ひと段落したのが深夜2時頃であったため入るのは断念した。

土曜日は非常勤先で勤務があるが、勤務先周辺に早朝からやってるサウナ付き銭湯を発見した。

朝から大勢の方がサウナを求めてやってきているようだった。

若い方~ご高齢の方まで色々な顔ぶれがある。

 

終わった後の多幸感、爽快感はやはり気持ちがいい。

まさに「ととのう」とはこれだ、と思いながら本日の出勤先へと足を向けた。

 

しかし、数日前にいやな記事を目にしていた。

 

マッチョ芸人、サウナで「脳梗塞」を発症

news.yahoo.co.jp

年齢的にも近かったり、トレーニングをしていたり、共通点が多いような気がしてしまう。

前回記事で書いた筋トレもそうだが、サウナ→水風呂は多幸感をえられる一方、体に悪いんじゃないかと思う部分もある。

サウナという高温下で血管を拡張させておいて、水風呂で急速に収縮させるというのだから、通常の生活ではなかなか起きえない異常事態が体には生じているはず。

 

そこでサウナ、水風呂のメリット、デメリットを調べてみた。

 

 

 

Re: Recolon 心とお肌に潤いを。

 

サウナの心血管系への効能

Association Between Sauna Bathing and Fatal Cardiovascular and All-Cause Mortality Events | Physical Therapy | JAMA Internal Medicine | JAMA Network

 

サウナ大国であるフィンランドで行われたこちらの研究。

サウナに入る頻度を週1回、週2-3回、週4-7回

1回にサウナに入っている時間を<11分、11-19分、>19分

にわけて研究している。

 

結果としては、

・頻度が多いほど、心臓突然死、心血管死を含め、全死亡が大幅に低下していた。

・19分以上サウナに入る人では11分未満の人に比べて、やはり同様に心臓突然死、心血管死が少なかった。(全死亡では有意差なし)

 

これらの効能は、低強度~中強度の運動に相当する発汗、心拍数増加をもたらすことで、血管内皮機能の改善、血圧低下、心機能改善効果が得られることによるとされている。

さすがフィンランド...

なかなか日本で週4-7回、1回19分以上入っている猛者はいないだろう...

 

Neurology® Journals

同じDrの出した別論文では脳卒中のリスクも軽減するという結論になっている。

全文は無料で読めないが...

 

 

しかし、これはあくまでサウナの効能であり、水風呂に入ることにまでは言及されていない。

また、フィンランドでは外気が冷たいため水風呂はないようだ。水風呂代わりに湖に入るパターンもあるとのことだが、水風呂vsフィンランドの外気浴vs湖で比較検討した研究はないだろう。

 

サウナと認知症の関係

Does sauna bathing protect against dementia? - ScienceDirect

こちらの論文では、中年の男女において、サウナ入浴の頻度が認知症の最も重要な予測因子であったという結果が得られた。

月0-4回サウナを利用する人に比べて、月9-12回(週3-4回)利用する人の認知症リスクは約半分であった。

しかし、温度が高すぎる(100℃を超える)場合には、むしろ認知症リスクが2倍に上昇するという結果も出ている。

 

ヒートショックプロテイン(細胞が高温のストレス下で発現するタンパク質群)による脳内の恒常性維持や、心血管系の機能向上でも述べたような血管内皮機能や血圧改善、動脈硬化の進展予防、コルチゾルなどのストレスホルモンの低減など様々な可能性が示唆されている。

しかし詳細なメカニズムは不明であり、サウナと認知症予防に直接的な因果関係があるとまでは断定できない。

 

では「ととのう」デメリットは?

サウナ→水風呂により「ととのう」ことが、脳梗塞心筋梗塞の発症と関連がある、という研究は見当たらなかった。

※私のリサーチ不足なだけかもしれません。

 

水風呂といった観点ではなく、冷水刺激という点であれば多数報告がある。

サウナという状況ではなく、「溺水といった状況で何が起こるか」、といったものが多いので、一概にあてはめることはできないかもしれないが、生理学的には共通点が多いと思われる。

 

https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/EP086283

こちらの論文では、冷水の刺激=コールドショックという表現をしている。

皮膚の受容体が急激に刺激されることで交感神経が賦活化されるのと同時に、鼻腔周辺にある副交感神経も賦活化されてしまう、自律神経の対立 (autonomic conflict)が致死的不整脈の原因になりうるとのことだ。

 

冷感刺激が加わることで心房細動や期外収縮が誘発されるという報告もみられる。

 

 

さて、今回はサウナ、水風呂のメリット・デメリットについて調べてみた。

何かしらの素因、リスクがある人にとっては、過度な「ととのい」はデメリットもあるのだということを念頭にサウナを楽しみましょう。

 

 

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だから私は筋トレで追い込むのをやめた...

コロナ禍以後、フィットネスブームにより多くの24時間ジムが誕生している。

 

私も筋トレは習慣であり、24時間ジムにも早朝から通っている。

youtubeでは数多くの筋トレインフルエンサーも活動しており、トレーニング方法を参考にすることも多い。

 

筋トレは肉体的にもメンタル的にも最高!といった風潮があるが、デメリットはないのだろうか。

 

 

ベンチプレス、スクワット、デッドリフトなどで重要視される「腹圧」というものがある。

レーニングベルトをきつく締め、腹圧をかけることでコルセット代わりにするような感覚だ。

この「腹圧をかける=いきむ」という行為はあんまり体に良くないのではないか?と、ふと疑問に思った。

 

例えば、便秘と脳卒中は関連があるという報告もあり、便秘による排便時の「いきみ」が頭蓋内圧上昇をもたらすことが影響しているかもしれないと言われている。

 

筋トレはすべてのソリューションではなく、むしろリスクもあるのだということを調べてみた。

 

 

筋トレ中の血圧上昇

かなり昔の報告であるが、ボディビルダーがレッグプレスを行う際に、一時的に収縮期血圧が300台まで上昇したという報告がある。

 

筋トレ中にはある程度血圧が上昇してしまうことが多いが、適度な筋トレであれば、その後に血管内皮細胞より一酸化窒素が出ることで、血圧は低下方向に働く。

 

しかし、過度の負荷をかけることで一過性ではあるものの、とんでもない血圧高値をもたらすこともあるのは事実だろう。

若年者や運動を長く続けている人であれば大きな問題はないかもしれないが、運動を始めたての人が急に高重量を扱うのは危険である。

 

筋トレと血管

全てが血圧上昇のみと関連づけることはできないが、ウエイトリフティング中に大動脈解離を発症した症例や、農家で重い荷物を運搬した際に頸動脈解離を発症した症例などが散見される。

 

高強度のレジスタンストレーニング動脈スティフネス(動脈の壁が硬くなり、伸展性が乏しくなる状態)を悪化させる可能性も指摘されている。

軽度から中等度レベルではそういった報告はなく、メリットを享受できるようだが、どの程度が高強度になるのか、ということについてはなかなか判断が難しい。

 

専門トレーナーがついていないのであれば、下記のようなサイトで、最大心拍数や体感でのしんどさをベースにして判断していくしかない。

日本健康運動研究所-運動強度の設定の仕方と測り方

 

いずれにせよ、もうだめだ、もう1repも上がらないと息も絶え絶えになるほど追い込む=高強度であろう。

 

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要注意なひと

もともと高血圧、睡眠時無呼吸症候群脂質異常症、糖尿病などの既往があり、喫煙歴や家族歴もある、となると運動許容度についてはかかりつけ医に相談するのが望ましい。

私の思う要注意人物は、

・50-60歳代の男性

・喫煙歴がある

・未治療の高血圧症、脂質異常症、糖尿病

・睡眠時無呼吸の可能性がある (家族から息が止まっていると指摘されたことがある人)

 

こういった背景があり、健診で運動したほうがいいですよ、といわれ突然ジム通いをするのはおすすめできない。現状の疾患の程度を確認し、一度は人間ドックなどで全身スクリーニングした上で運動療法を医師の指示のもと開始したほうがよい。

 

※もともと背景に脳動脈瘤や大動脈瘤、血管奇形、結合織病(Marfan症候群など)がある人は当然注意が必要であるが、これらの疾患は調べていないと気が付かない場合はほとんどである。

遺伝性疾患については家族歴を聴取すれば判明する場合もある。

※やや話は脱線するが、心配になるがあまり、その他の動脈瘤や血管奇形を調べるために脳ドックを受けたり全身を隅々まで調べようとするのはおすすめできない。

これはまた別記事で書こうと思う。

 

運動と心房細動

なかやまけんみゃくんです!のCMでおなじみになりつつある心房細動。

iyakutsushinsha.com

 

非常に多い不整脈であり、年齢とともに増加する。

脳梗塞の発症や長期罹患による将来的な心不全なども懸念される。

 

ラソンランナーなどの持久系アスリートには心房細動や冠動脈石灰化リスクが高いことが知られている。

ラソンのみならず、近年の研究でもアスリートは心房細動を発症する可能性が非常に高いことが示されている。

Risk of atrial fibrillation in athletes: a systematic review and meta-analysis

 

心房細動は運動による血圧上昇も含めた心負荷や交感神経の賦活化が影響していると思われる。

夜に筋トレをしてしまうと寝つきが悪くなったという経験のある人も多いのではないだろうか。

バズーカ岡田さんのショート動画であるが、こちらでも脚トレの日は眠れない、と話が盛り上がっている。

https://youtube.com/shorts/ZxmLSC7NV64?si=BexPX4f6fPj47FWW

 

 

雲のやすらぎプレミアム 三つ折りマットレス|イッティ公式ショップ 一番星

 

私の思う最悪の組み合わせは、

「筋トレ→寝つきが悪い→寝酒をする」

という流れだ。

 

飲酒は心房細動発症のリスクである。

筋トレで交感神経を活性化させ、その後飲酒というのはさらに心房細動を誘発しやすい。

 

下記の論文で提示されているJカーブがわかりやすい。

Extreme Exercise Hypothesis=過度な運動はむしろ健康にとってよくない可能性。

The “Extreme Exercise Hypothesis”: Recent Findings and Cardiovascular Health Implications - PMC

 

この論文によると、WHOで推奨されている運動量は

「週150分程度の中強度の有酸素運動、週75分程度の高強度の有酸素運動、あるいはその組み合わせ。」

「週2日程度はレジスタンス運動を組み入れる。」

 

しかし推奨量よりも多ければ3-4倍の運動量がもっとも効果的かもしれないとのことで、現状ではもっともメリットを享受できる運動量についてはまだ不明確であるようだ。

 

腹圧をかけてガンガン追い込む筋トレはせずに、気持ちのいい汗をかく程度の筋トレ+有酸素運動というのが健康面では最適解のようだ。