別に僕は何でもな医師。

中堅内科医の独り言、健康コンサルタント

糖尿病で透析になる人はこんな人

どんな人が糖尿病で透析になってしまうのだろうか。

私の祖母も糖尿病だが90歳を超えても透析にならずにぴんぴんしている。

一方で30-40代でも透析になってしまう人もいる。

若くして透析になってしまう方の一例を物語風にお話しようと思う。

 

※以下に提示する患者さんはフィクションです。リアリティを出すために物語調にしています。私の経験から典型的な患者像を書かせていただきますが、特定の個人を指すものではありません。

 

 

 

30歳前半で血糖が高いと指摘

健康診断を受診し、血糖値が高いと指摘された。

特に症状はなく、数年放置していたが、再度健康診断で糖尿病の可能性があると言われクリニックを受診した。

その際、HbA1cは10%を超えており、血糖値も確か300台であった。

インスリンの治療が開始され、しばらくすると数値も改善してきた。

だいぶ良くなったと言われたこともあり、通院するのが面倒になってしまい途中で受診するのをやめてしまった

通院をやめた後の生活習慣も特に気をつけることはなく、間食やジュースを摂ることも多かった。

 

 

30歳後半になり、倦怠感、喉の渇きで再度病院を受診

喉が渇き、やたらと頻尿になった。その分ジュースを飲むことが増えていた。

疲れやすさもあり、病院を受診するとHbA1cは14%まで上昇し、血糖値も400台であった。

喉が異常に乾くだけでなく、食べてる割にどんどん痩せてきていたのも糖尿病の症状らしい。

インスリン治療を再開。眼科の診察では、糖尿病性網膜症があり、レーザー治療を受けることになった。確かに何となく目が悪くなっていると感じていた。

腎臓の機能はCr1.5ぐらいで、透析の話はされたことがなかった。しかし、尿蛋白がかなり多く、むくみも悪化してきたため、腎臓内科へ紹介されることになった。

 

40歳前半で腎臓内科を受診

尿から大量の蛋白が漏れており、血液のアルブミンが低下している、ネフローゼ症候群という状態らしい。

追加としてSGLT2阻害薬といわれる種類の薬が始まった。

他に腎臓を保護してくれる薬は既にある程度は処方されているとのことだった。

私の場合は、アジルサルタンとエサキセレノンがそうらしい。

 

はじめて近い将来透析になるかもしれませんと言われた。

 

腎臓内科、糖尿病内科に通院を続け、血糖値は安定してきたが、むくみはなかなかよくならない。日によってムラがあるが、足がぱんぱんに腫れて持ち上げられないぐらいの時もある。

塩分制限を徹底してくださいと言われ、栄養師さんの話も聞いた。

けれどなかなか塩分6gまで抑えるのは難しい。

足のむくみは良くならず、利尿薬はどんどん増えていった。

 

40歳半ばでCKD stage5へ

尿は出ているのにむくみは相変わらず改善しない。

Crも数年のうちに2→3→4と上がってきた。

慢性腎臓病のステージでいうとすでに一番悪い5まで来ているとのこと。

貧血も進行してきたため、外来のたびに造血剤の注射打っているが結構痛い。

このままむくみがとれなければ透析になると言われた。透析のためにはシャントといわれる手術をしなければならないらしい。

週3回、1回4時間もしなければならないのは大変なので、できれば先延ばしにしたいと先生に話す。

先延ばしにしてしまうと、苦しくなったり、カリウムが高かったりした場合には、緊急で透析を開始しなければならないこともあるらしい。

緊急で透析をするにはカテーテルを首から入れる必要があると言われた。

むくみ以外の症状はないので、まだ大丈夫なはずだ。

 

40歳後半で透析開始

むくみは相変わらずよくならず、体重は10kg以上増えている。歩くと息切れがしやすくなった。

外来ではやはり透析を奨められたが、なんとか利尿薬を増やすことで先延ばしにしてもらった。

ある夜、息苦しさで目が覚めた。とてもじゃないけど眠ることもできず、救急車を呼んだ。

病院でレントゲンや採血をしたところ、腎不全に伴い肺が水浸しになっているとのことであった。夜間は圧をかけて肺を広げるマスクをつけてやり過ごし、翌朝からカテーテルをいれて血液透析を開始する方針となった。

翌朝、右首のあたりから普通の点滴よりも太いカテーテルを入れた。局所麻酔のおかげでそんなに痛みはなかったが、首回りに針を刺されたりするのは怖かった。

 

いよいよ血液透析が始まった。4時間かけて2kg近くの余分な水を取り除いてくれた。そのおかげもあり、圧をかけるマスクは透析が終わった後に不要となった。

さらに翌日も同様に透析を行い、そこから月水金の週3回のスケジュールで行うことになった。

後日、左腕にシャントの手術を行い、2週間ほど経ったところでシャントを使えるようになったため、首のカテーテルは抜いてシャントから血液透析を行うことになった。

シャントは針を二か所刺すのだが、これまた太い針なので痛い。透析中は割と暇だが同じ体勢でいなければならないし、シャントの手も大きくは動かせない。

他の患者さんはテレビをみたり、本を読んだり、自由に過ごしている。

自分も慣れてくるのだろうか。

 

おわり。

 

糖尿病により若くして透析になる人の特徴として、

・著しい高血糖状態を放置していた。

・通院を自己中断してしまう。

・早期から蛋白尿が出現し、最終的にはネフローゼ症候群といわれる状態に至る。

・塩分制限を遵守できない。

 

などが挙げられる。

特にネフローゼ症候群に至ってしまうと、治療を強化しても腎機能の低下速度を緩やかにできなくなってしまう印象がある。

血糖コントロールも厳格に行ったとしても、やはり「時すでに遅し」な感じもある。(もちろんその後の合併症を減らすためには重要だが)

 

逆を言えば、若くして透析にならないようにするためには、

・早期に蛋白尿を発見(微量アルブミン尿の時点)

・適切な腎保護薬(SGLT2阻害薬、GLP-1、ARB、MRA)を投与する。

・食事運動療法により、血糖、血圧管理を適切に行う。

・通院を自己中断しない。

 

これらを守ることでなるべく透析に至らないようにすることができるはずだ。

ネフローゼ症候群に至った後でも、軽減するためにいつからでも取り組むべきである。

 

今回は「糖尿病で若くして透析に至った一例」を物語風にお送りしました。

次回は「検尿異常を放置した結果...」という物語をお伝えしようと思います。