近年、CKMという言葉が出てきた。
Conservative kidney management
血液透析、腹膜透析、腎移植といった腎代替療法を行わずに、保存的治療を継続していくことを指す。
今回は透析を行わない場合にどのような症状が出てくるかをお話していこうと思う。

浮腫(むくみ)
透析とは?でも書いたが、腎不全に伴ういろいろな症状が出てくる。
わかりやすいのは浮腫(むくみ)だ。
むくみは重力に伴い足にみられることが多く、むくみが悪化してくるとふくらはぎのみならず太ももや腰、背中にかけてもむくんでくる。
体表以外にも胸水、腹水といった余分な水が貯留し、うっ血性心不全・肺水腫を生じ、呼吸が苦しくなる。
夜間~明け方にかけて息苦しさが悪化したり、普段歩けていた道や階段が苦しくて歩けなくなる。
高カリウム血症
続いて、高カリウム血症
腎機能の低下とともにカリウムの排泄がうまくいかなくなると血清カリウムが上昇する。カリウムを下げる内服薬もあるが、それでもなお高値が続く場合にも透析の適応となる。
カリウムは7付近を超えると致死的な不整脈を生じることもある。
慢性腎不全の患者さんが、何らかのきっかけで更に腎機能を悪くするイベント(感染症、脱水、NSAIDsや抗生剤などの薬剤性)を起こした場合にしばしばみられる。
カリウム制限を遵守できずに高カリウム血症をきたすこともある。
年末年始に暴飲暴食してしまい、年明けの外来で体重が大幅に増えたり、カリウムが7近くまで上がってしまっているような方もいる。
代謝性アシドーシス
カリウムと合わせて、代謝性アシドーシスも重要である。酸性物質が体内に溜まり、体のpHが酸性に傾く。著明なアシドーシスは頻呼吸、血圧低下、意識障害に繋がる。
尿毒症
個人差は大きいが尿毒症を起こす方もいる。
重篤なものになると意識障害、傾眠傾向、痙攣が生じることもあるが、頻度として多いのは、掻痒感、食思不振、悪心といったところだ。
貧血
貧血も腎不全が進行してくるとみられるが、ESAといわれる造血剤の注射も効きづらくなる。(=ESA抵抗性)
かつてESAの注射製剤がなかった時代には、末期腎不全患者は輸血する他なかった。
現在もESAが効きづらい場合には輸血で対応したり、場合によってはHIF-PH阻害薬に変更することもあるが、それでも限界はある。
透析を行うことでESA抵抗性が解消されるケースが多い。もちろん他の貧血の原因を検索することも必要だ。
このように透析をしなければ様々な症状で苦しむことが多い。もちろんある程度のコントロールは利尿薬、カリウムを下げる薬、ESAなどで対応できるが、eGFRが一桁になってくるとさすがに厳しい。
ずっと透析を拒否し続けてきた方も、私の経験してきた中では、最終的に呼吸苦で緊急透析になるケースがほとんどである。
超高齢社会となり、80歳代のみならず90歳を超えても透析を開始することもある。
やはり「透析はできるだけやりたくない」、「この年だからもう透析はせずに死んでもいい」とお話される方がほとんどだ。
我々もみんなをすぐ透析にしてしまおうなんて気持ちはなく、できるだけ透析にならないよう診療に努めている。
CKMとして透析をやらないという選択肢に反対はない。
しかし、透析を行わなかった場合の諸症状への対策を立て、緩和的に看取っていくというのが難しいのも事実である。
超高齢社会の現代では、心不全、腎不全患者で溢れている。
癌などの悪性疾患のみならず、慢性疾患のターミナルケアというのも整備されていく必要がある。