外来で不眠を訴える方は多い。
日本人の平均睡眠時間は短く、「不眠大国」といわれることもある。
その経済損失は15~20兆円といった規模にも及ぶという。
いいお薬ありますか?という患者さんも多いが、まずは薬に頼らない方法を提案させていただく。

ポイント① 起床時間を一定にする
床に就く時間を一定にしようと試みる方が多いが、大事なのは起床時間を統一するということ。
布団に入ったはいいものの、「全然眠れない!」という焦りから、逆に入眠が困難になってしまう。そうなるとベッド=眠れない場所、と潜在的に刷り込まれ、不眠が加速してしまう。
患者さんの中には、布団に入って2-3時間寝付けなくて困っている、という方もいる。
その場合は、体感でいいので15分ほど経っても眠れないと感じたら布団から出てしまおう。自然な眠気がきたタイミングで再度布団に入るのだ。
場合によっては、深夜遅くまで眠気が来ないために、睡眠時間が極めて短くなってしまうこともある。
その際、翌日の「昼間の眠気は夜に向けての貯金」と捉えるようにする。
ポイント②寝床は寝るだけの場所にする
上の話ともかぶってくるが、眠れないからといって一旦目をあけてスマホをいじってしまうケースだ。
スマホのブルーライトが睡眠の質を下げるのは有名だが、youtubeやtiktokにある、いわゆるショート動画といわれるものには要注意。
次から次に刺激的なものが流れてくることで交感神経が活性化されてしまう。
「スマホ依存」になっている現代人は非常に多いので何とかそこから抜け出して、良質な睡眠を手に入れよう。
スマホを心室とは別の部屋に置いてしまうのが手っ取り早い。枕元にスマホを置いておくと心理的に気になってしまうことで睡眠の質が下がると言われている。
アラーム機能をつけてある人は別室でアラームが聞こえる範囲に置いておく、あるいはアナログな目覚まし時計にする、といった方法もある。
眠れない日は布団から出て別の部屋で、ソファなどのリラックスできるスペースで紙媒体の本で読書をしたり、軽いストレッチをする。
読書の内容は熱中・興奮してしまうようなものは避ける。
つまらない、退屈だなぁという感覚があると眠たくなった経験がある人は多いのではないだろうか?
自分の興味のないものや、やや難しい内容のものを目にするのもいいかもしれない。
ポイント③カフェイン、アルコールは避ける
これも重要だが、夕方以降は覚醒作用のあるカフェインは避けるようにする。
職場で午後まで働いている人はコーヒーを飲む習慣があるかもしれないが、できれば16時頃からはカフェインの多い飲料は避けたほうがよいだろう。
コーヒー以外にも緑茶や紅茶も比較的カフェインは多く、ゼロカロリーのコーラやエナジードリンクにも多く含まれているため避けたほうがよい。
また、寝酒をする方も要注意である。
アルコールは確かに寝つきはよくなるのだが、睡眠全体としては質を下げてしまう。
カフェインもそうであるが、アルコールには利尿作用があり、夜間トイレに起きる回数も増えてしまう。
寝酒が習慣化してしまうと、極端な場合はアルコール依存症に繋がりうる。
ポイント④朝日を浴びる
朝に日光浴をすることは非常に大切である。
体内時計は少しずつずれていることが知られている。
朝日を浴びると、視神経を通して視交叉上核に届き、体内時計をリセットしてくれる。
また、朝日を浴びて14-16時間すると、脳の松果体とよばれる部位から眠気を促してくれるホルモン(メラトニン)が分泌されやすくなる。
デスクワークが多くなり、日光を浴びる機会が少ない方は意識して朝日を浴びるようにしよう。
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ポイント⑤軽い運動を習慣にする
日中にできれば30分前後の有酸素運動を行う。筋トレなどの比較的激しい運動をする場合も午前中に行うことが望ましい。
Aerobic exercise improves self-reported sleep and quality of life in older adults with insomnia
こちらの論文(55歳以上が対象の研究だが)にも紹介されているが、週4回の有酸素運動を行うことで、
・寝つきが良くなる
・睡眠時間が長くなる
・睡眠満足度が上がる
と報告されている。
The effects of physical activity on sleep: a meta-analytic review
こちらのメタアナリシスでも、運動は睡眠に一貫してポジティブな影響を与えると報告されている。
仕事が終わって夕方以降に激しい運動をすると、交感神経が活発に働くことで入眠が難しくなる。私も時折経験するのだが...
筋トレは午前中に、有酸素運動をするとしても床に就く3時間前までには済ませておくほうがよい。
中等度の運動は睡眠薬(ゾルピデムなど)に比べると即効性には劣るものの、効果は同等とも言われている。
依存性もなく、その他身体疾患においても有益な運動は、「万能薬」とも言える。
運動にドはまりして、睡眠を妨害することのないように注意は必要だが。
人生の3分の1は睡眠であり、日中のパフォーマンスを作用する重要な要素である。
まずは薬に頼るのではなく、これらに取り組んでみるのはどうだろうか。